タイコを叩きそうもない電気屋のおじさんがなにげにどーんどーんとおっぱじめた。
タイコを叩きそうもない煙草屋のおばちゃんがそこにとんとここと響きを足した。
近頃ヘルニアでよろしくないはずの食品店のじっちゃんがいがいと鋭くぱしっと叩いた。
奥さんカーディガン脱いでタブラひっつかみどえんと深い。
孫が這ってきてデンデンダイコ愛らしく。
買い物にきた米屋のばあさん無愛想だが鈴しゃかしゃかと空気うごかす。
牛乳屋のにいちゃんが中型のジャンベで参入。
電気保安のあんちゃんが自作のディジュリで時を告げる。
プロパン屋のおじさんが古いバスドラ担いで来、なんと棒付きの亀だわしでかました。
和菓子屋のあんさまがかねの焼き型鉦にする。
酒屋の配達の彼がポコペン吹いた。
元コロッケ屋のばっさまがギロぎっこぎっこ。
カラオケスナックの反戦ママがひときわ化粧濃くバラフォン叩き舞う。
介護の手をかり現れた花屋の大奥が超特大のアンコロンを揺さぶる。
つぶれたタイコ屋がありったけのタイコをリヤカーでもってきた。
閉めた金物屋が鍋釜ひろげた。
自転車屋のじさまや隣りの保育園児、建具屋の若夫婦、水道屋のおっちゃん、文具屋のおくさま、徘徊のばさま、転勤の会社員も音を聞きつけ、鳴らすものを手にとった。
音が回った。
夜の木と夜の鳥が歌った。