おがばさんは主に版画を集めている50代?の男の人です。
ときどき7、8点の版画や古い書籍を大きな袋に詰めて、店に来てくれます。
ふつうにマット入れをするものがほとんどですが、本を額に入れる、陶板を入れる、あるいは裏表両面を見せるなど、ご要望にはいろんなケースがあるので、おがばさんが来るのをみたとたん、思わず発奮してしまいます。
なんでもできます、というふりを嘘でもしたいのです。
さあて、と考えるのは後でもいい、と初めのうちは思っていました。
まあまあそう胸張って腹出して装いつつ、なんとかかんとかスリリングにこなしていました。
いろんな作品に出会えるのは正直嬉しかったです。もちろん緊張もします。
でも回を重ねるにつれ、だんだん肩の力が抜けて、ややこしいものはおがばさんと相談しながら額装するようになっていきました。音楽でいえばセッションみたいなものです。いろいろお話をして、無酸の合紙(絵と裏板の間に挟む)やテープ(作品を貼り込む)も常時準備するようになりました。
おがばさんの持ち込むいろんな作品のおかげで、ずいぶん勉強させてもらっているような気がします。もちろん他にも、さまざまなお客さまのさまざまな希望にお応えする機会があるのですが、「集めてしまう」コレクターの対象の愛しかたというか(持ち主ご当人こそさらっとしつつも)、1枚1枚生かす作業にこのように関われること、幸せだし体験だなあと思っています。
うまくではないが言い換えると、決して「特別ではない」けれどこれが好きだから生かしたいんだという人間のココロモチ、したらどんどん増えちゃって「(奥さんはもう)あきれてますよー、つか怒ってます」と笑うおがばさんの表情、いろいろあるけど平和でいいなあ、と私もきもちよく一緒に笑い合えるようになりました。
もう50点近く額装したかな?
(私)「おがばさん、そろそろ美術館開きますか?」
(おがばさん)「いやー、、、、結局売っちゃうでしょ」
(私)「え、画商さんデビューですか?」
(おがばさん)「いや、そんなでないけど、、、(静笑)」
(私)「並んでるとこそのうち見たいなあ」
(おがばさん)「(笑)」