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2009年11月8日新宿LOFTの記憶、あるいはレポート
「NON BANDってどんな音?」と尋ねられると返答に困る。
「えーと、ベース弾きながら歌う女性と呪術的ドラムと艶やかなバイオリン、あるいは痙攣したギターで・・・」と答えてもどうにもバンドの肝要を表現しきれない。
 パンキッシュでニューウェイブでトラディショナルでラウドでときにフォーキーな、と言葉を重ねてもまだ足りない。
 音を聴いたら一番わかるよと興味津々な彼や彼女を突き放すのもなんだか悪い。

 さて、ならば2009年11月8日の新宿ロフトでのNON BANDのライブ・パフォーマンスを思い返してみよう。するとこのバンドを形容するにもっとも相応しいシンプルなフレーズが頭に浮かぶ。
 ダンスバンド。
 NON BANDはダンスバンドである。

 以下、あくまで「その日のライブ」をリポートする。「次回のライブ」はまったく違ったものになるだろう。
 駄文につき、この記事を読まれた方の参考になるかどうかはわからないが、とりあえず一人の人間が良い音楽と遭遇したということだけは伝わるはずだ。
 NONさんからもらった当日の記録をおさめたDVDを観ると、客席一番手前でずっと体を揺らし続けているわたしの姿がはっきりと映っている。

 11月9日。新宿ロフト。
 ステージ前に設置されたスクリーンに「NON BAND」という文字が映し出された。
 もはや少なくない歓声があがる。
 そして、スクリーンが上方に上がる。
 また歓声。
 カウント。一曲目のイントロが演奏される。が、なんの曲をやってるのかにわかにわからない。玉垣満氏のタムを多用したドラム、山岸騏之介氏のカチャカチャとカッティングするリズミカルなギターがどこからどう聴いてもNON BANDだ。今回のライブはアコーディオンでキキオンの佐々木絵美さんが参加しており、もとからバンドが醸し出しているルーツ不明な持ち味がさらなる無国籍料理に仕上がっている。
 
 ーイッた途端に死なせてあげる

「Vibration army」だ。
 バンドでのステージは久しぶりということでご愛嬌のズレはあるもののそこがまたやんちゃで良い、と褒めてしまってはあまりにもファン心理だろうか。会場の誰もが地を這う奇妙なグルーヴに揺らされている。曲途中、ブレイクがビシリと決まる。
 二曲目「Silence-Hi-Speed」。
 反復するドラム。ビートニクなボーカル。後半山岸氏の性急なリズムギターがヴァイオリンに持ちかえられ、さらにバンドがシュールにねじれる。変態としかいいようがない。
 そしてテンポ遅目の「Wild child (can't stand it)」、「Quiet Song」へ。
 両曲ともヴァイオリンのフレーズが印象的なCDの音源に比較的近いアレンジだ。
 野生の子供が体に入ったのか、曲途中それまでの太く低めのボイスから一転あどけない幼女のような高音に変わるヴォーカリゼーションあり。
「ひまわり」。この曲は「ひまわり」という名の犬のことを歌った詩でペット好き必聴の名曲である。
 童謡のような歌いまわしに絶妙なミスマッチ感をだすフリーキーなベースがまたなんとも。
 これぞNON BAND!な代表曲「Solar」とNONソロアルバムの冒頭曲「Immigrants」とスタンダードなナンバーが続く。
 何度もやっているはずなのにラフな演奏で面白い。個人的にはアマチュアイズムが大好物なので素敵すぎる。
 また、どちらも<スタンダード>とはいってみたものの、改めて変な曲だと感じる。
 まるでニューヨークの地下ライブハウスのような景色が広がる。アンディ・ウォーホールもビビるに違いない。
「お金をくれたKどん」。
 この日のライブの白眉は「Kどん」。なんとも文句のつけようのない完璧な演奏だった。異国情緒漂うシンプルなブズーキの演奏にまた体が揺れる。
 さてラストは感動の「ie」。と思いきや楽曲の終わり方を見失い「あはは~」と無理やり終わらせる、いかにもメインストリートのならず者パフォーマンス!
 わたしも笑っちゃいました。
 
 以上。
 
 さて皆さん、わたしの駄文を読んで反復するドラムとヴァイオリンと艶やかな歌声にのせてダンスを踊りたくなっただろうか?
 次の彼らのライブがいつ行われるかはわたしにはわからない。
 ダンスバンドのライブは楽しい。
 言いたいのはそれだけである。

 高田公太(FULLMOON EMPIRE)
by nonband | 2010-01-08 12:50 | レヴュー記事 | Comments(0)
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